「立春」「夏至」「冬至」「春分」「秋分」――これら日本の伝統的な季節用語を、まとめて二十四節気(にじゅうしせっき)と呼びます。1年を太陽の運行に合わせて24等分し、それぞれに名前と季節感が割り当てられているのです。私たちの暮らしに溶け込んでいるこの暦の仕組みを、図と表で詳しく見ていきましょう。

ニュースで「今日は大寒です」「明日から春分」などと言う時、その言葉は実は太陽の天文学的な位置から決まっています。二十四節気は単なる季節の言葉ではなく、太陽が「黄道を何度進んだか」で定義される、非常に正確な天文学的な暦なのです。

二十四節気のポイント
1年を24等分。太陽が黄道上を15度進むごとに新しい節気が始まります。古代中国で誕生し、日本の暮らしと天文学を結ぶ重要な暦として2,000年以上使われ続けています。

二十四節気の成り立ちと歴史

二十四節気の起源は、紀元前4〜3世紀頃の中国・戦国時代に遡ります。中国の黄河中流域(華北平原)の気候に基づいた季節区分として生まれ、漢の時代(紀元前2世紀)に完成しました。

当時、中国の農民は月の満ち欠けに基づく「太陰暦」を使っていましたが、この暦は季節と少しずつズレていくため農作業の指針として不便でした。そこで太陽の動きを基準に1年を24分割し、「今いつ種をまけばいいか」「いつ収穫すればいいか」を示す指針として二十四節気が整備されたのです。

日本へは飛鳥時代(7世紀頃)に伝来し、以来1,400年以上にわたって日本の暮らしの中に溶け込んでいます。現在でも俳句の季語・料理・祭事・お彼岸など、日本文化の多くの場面で二十四節気が活きています。

24節気の数(春夏秋冬×6)
15°節気ひとつあたりの太陽黄経
約15日各節気の長さ
紀元前2世紀二十四節気の完成時期(漢代)

天文学的な定義

二十四節気は、太陽が天球上の黄経(黄道上の角度)を15度進むごとに区切られます。

地球は太陽のまわりを1年かけて公転しています。地球から見ると、太陽が天球上を1周(360度)移動するように見えます。この太陽の見かけの通り道を黄道、その上での太陽の位置角度を太陽黄経と呼びます。春分点(太陽が南から北に天の赤道を横切る点)を黄経0度として定め、ここから15度ごとに区切ると24分割になります。

太陽 春分(0°) 清明(15°) 穀雨(30°) 立夏(45°) 小満(60°) 芒種(75°) 夏至(90°) 小暑(105°) 大暑(120°) 立秋(135°) 処暑(150°) 白露(165°) 秋分(180°) 寒露(195°) 霜降(210°) 立冬(225°) 小雪(240°) 大雪(255°) 冬至(270°) 小寒(285°) 大寒(300°) 立春(315°) 雨水(330°) 啓蟄(345°) 二十四節気と黄経
二十四節気と太陽黄経の対応。黄経0度(春分)から15度ごとに節気が並んでいます。内側が太陽、外側が各節気を示します。

24節気の名称と意味(春:黄経315〜30度)

「春」の節気は立春(黄経315度)から穀雨(黄経30度)の6つです。「なぜ立春が黄経315度なの?」と思うかもしれませんが、立春は冬至(270度)から45度進んだ位置です。二十四節気の「春」は天文学的な春分(0度)の前から始まります。

  • 立春(りっしゅん)黄経315度・2月4日頃:暦の上での春の始まり。前日が節分。実際にはまだ寒さが厳しいが、梅の花が咲き始める地域もある。
  • 雨水(うすい)黄経330度・2月19日頃:雪が雨に変わり、氷が溶け始める頃。「三寒四温」が実感できる時期。農作業の準備を始める指標。
  • 啓蟄(けいちつ)黄経345度・3月6日頃:冬眠していた虫(蟄虫)が目を覚まして土から出てくる頃。「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」という七十二候に対応。
  • 春分(しゅんぶん)黄経0度・3月21日頃:昼と夜の長さがほぼ等しくなる。太陽が真東から昇り真西に沈む。お彼岸の中日。
  • 清明(せいめい)黄経15度・4月5日頃:「清浄明潔(せいじょうめいけつ)」の略。万物が清らかで生き生きとする時期。沖縄や中国ではお墓参りの行事がある。
  • 穀雨(こくう)黄経30度・4月20日頃:穀物を育てる春の雨が降る頃。「春雨降りて百穀を生ず」という意味。田植えの準備期。

24節気の名称と意味(夏:黄経45〜120度)

  • 立夏(りっか)黄経45度・5月6日頃:夏の始まり。新緑が目立ち、気持ちのいい季節。こどもの日(5月5日)の翌日頃。
  • 小満(しょうまん)黄経60度・5月21日頃:植物が育ち、小さく満ちてくる頃。麦の穂が実り始め、農村が最も活気づく時期でもある。
  • 芒種(ぼうしゅ)黄経75度・6月6日頃:芒(のぎ、稲の穂先の毛状の部分)のある穀物の種をまく頃。梅雨の時期と重なる。
  • 夏至(げし)黄経90度・6月21日頃:北半球で昼が最も長くなる日。ヨーロッパでは「夏至祭」が盛んに行われる。日本では「夏至の蛸を食べる」という関西の慣習がある。
  • 小暑(しょうしょ)黄経105度・7月7日頃:暑さが増してくる頃。七夕(7月7日)と近い。
  • 大暑(たいしょ)黄経120度・7月23日頃:1年で最も暑い時期。「土用の丑の日」にうなぎを食べる習慣はこの時期と重なることが多い。

24節気の名称と意味(秋:黄経135〜210度)

  • 立秋(りっしゅう)黄経135度・8月8日頃:暦の上での秋の始まり。この日以降の暑さは「残暑」と呼ぶ。立秋を過ぎてからの暑中見舞いは「残暑見舞い」に変わる。
  • 処暑(しょしょ)黄経150度・8月23日頃:暑さが収まり始める頃。「処」は「おさまる」という意味。朝晩が少し涼しくなり、空の雲も秋らしくなってくる。
  • 白露(はくろ)黄経165度・9月8日頃:朝露が草の葉に宿り、白く輝いて見える頃。「陰気ようやく重なり、露凝りて白色となる」という意味がある。
  • 秋分(しゅうぶん)黄経180度・9月23日頃:再び昼夜の長さがほぼ等しくなる。秋のお彼岸の中日。「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通り、この頃から急に涼しくなる。
  • 寒露(かんろ)黄経195度・10月8日頃:冷たい露が降りる頃。稲刈りが本格化する時期で、菊の花が咲き始める。
  • 霜降(そうこう)黄経210度・10月24日頃:霜が降り始める頃。朝晩の冷え込みが増し、木々が紅葉し始める。

24節気の名称と意味(冬:黄経225〜300度)

  • 立冬(りっとう)黄経225度・11月8日頃:冬の始まり。木枯らし一号が吹く頃と近い。鍋物が恋しくなる季節の到来。
  • 小雪(しょうせつ)黄経240度・11月22日頃:雪が降り始めるが、まだ積もるほどではない頃。「小さな雪」という意味。
  • 大雪(たいせつ)黄経255度・12月7日頃:雪が本格的に降り積もる頃。北日本や山間部では本格的な冬の到来。
  • 冬至(とうじ)黄経270度・12月22日頃:北半球で昼が最も短い日。ゆず湯に入り、かぼちゃを食べる習慣がある。この日以降、昼がまた長くなり始める「再生」の節気でもある。
  • 小寒(しょうかん)黄経285度・1月6日頃:「寒の入り」。本格的な寒さが始まる。小寒から大寒までの期間を「寒中(かんちゅう)」といい、寒中見舞いを出す時期。
  • 大寒(だいかん)黄経300度・1月20日頃:1年で最も寒さが厳しい時期。「大寒の卵」を食べると縁起が良いという習慣がある地域もある。

季節感とのずれ

「立春は2月上旬なのに、まだ寒い!」「大暑(7月下旬)よりも8月の方が暑い気がする」と感じることはありませんか? これには2つの理由があります。

まず、二十四節気は中国・華北平原の気候を基準に作られたものであり、日本の気候と完全には一致しません。中国大陸の春の訪れと日本列島の春の訪れはタイミングが違います。

もうひとつは熱容量の遅れです。夏至(6月21日頃)は太陽高度が最高ですが、地面・海が最大限に温まるのは1〜2か月後。そのため最も暑い時期は7〜8月になります。冬至も同様で、最も寒い時期は1〜2月です。

それでも、節気は「これから訪れる季節の予告・方向性の転換点」として味わうのが本来の楽しみ方です。立春には「光が春らしくなってきた」、冬至には「今日から日が長くなる」という自然の変化を感じ取ることが二十四節気の醍醐味です。

七十二候と雑節

七十二候(しちじゅうにこう)は、二十四節気を各3つに細分したもの。約5日単位で「春の鳥のさえずり」「霜の溶け始め」「魚が水面に跳ぶ」など、自然の細やかな変化が詩的な言葉で表現されています。

また雑節(ざっせつ)と呼ばれる節も日本の暮らしに重要です。

  • 節分:立春の前日。豆まき・恵方巻き。
  • 彼岸(春・秋):春分・秋分を中心とした7日間のお墓参り。
  • 土用:四立(四季の始まり)の18日前。土用の丑の日はうなぎを食べる。
  • 八十八夜:立春から88日目。茶摘みの目安。
  • 入梅・半夏生・二百十日:農作業の指針となる節。

現代の暦と二十四節気の計算

現代の日本では太陽暦(グレゴリオ暦)を使っていますが、二十四節気の日付は毎年天文計算で算出されます。地球の公転周期(約365.2422日)が暦年(365または366日)と一致しないため、節気の日付は年によって前後します。

日本では国立天文台が毎年「暦要項(れきようこう)」を官報に掲載し、翌年の二十四節気の日付を公式に発表しています。「今年の冬至は何日か」は、国立天文台の暦要項が正式な答えです。

よくある疑問

Q. なぜ「二十四節気」の「節気」というのですか?
A. 中国語で「節(jié)」は「区切り目」を意味します。竹の節のように1年をきちんと区切ったものが「節気」です。特に奇数番目(1・3・5…)の節気を「節」、偶数番目を「中気」と区別することもあります。
Q. 節気の日付はなぜ毎年1〜2日ずれるのですか?
A. 地球の公転周期(365.2422日)はカレンダーの年(365日か366日)と一致しないためです。4年に一度うるう年を設けることである程度補正されますが、完全に合わないため毎年微妙にズレます。
Q. 「七草」「お彼岸」「土用の丑」は二十四節気に含まれますか?
A. 含まれません。これらは「雑節」と呼ばれる、二十四節気とは別の季節指標です。日本独自の農業・行事の文化から生まれたものです。
Q. 二十四節気はユネスコの無形文化遺産に登録されていますか?
A. 中国の「二十四節気――中国人の自然界への知識と実践」が2016年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。日本では独自のアレンジ版として「和暦」に組み込まれています。

用語整理・参考リンク

用語意味
二十四節気太陽の黄経で定めた24の季節区分。15度ごと。
黄経黄道上の太陽位置を表す角度(0〜360度)。
春分点太陽が天の赤道を南から北に横切る点。黄経0度の起点。
七十二候二十四節気を3分割した約5日単位の季節表現。
雑節節分・八十八夜・土用など、節気以外の日本独自の季節指標。
暦要項国立天文台が毎年官報に掲載する翌年の暦の基本データ。
太陰太陽暦月の満ち欠けに二十四節気を組み合わせた旧暦。